2025年8月18日

兎亭の使い心地

2025年8月9日、江古田の兎亭にて

こちらは先日の「東京亜熱帯2025」の写真です。自主映画の上映環境に関しては、今までいろいろ手探りをしてきました。映画館がベストなのは当然ですが、商業映画の上映館を借りるにはそれなりの予算が必要なので、もっとリスクの小さな日常的な上映環境がないか?ということです。

それこそ、都心の小さなレンタルルームから試しました。他には、区民館の音楽練習室、インディペンデント系のミニシアター、固定スクリーンのあるライブハウス、業務用の試写室などでも上映しました。どこも一長一短ですが「映写」に限定するなら、やはり映画専用の試写室が頭抜けています。

ただ、もっと気軽な「イベント」として開催し、ミクスメディア的な「遊び場」にできるかなと期待していたのが、江古田の「兎亭」でした。初めて使った感想としては、ほぼ期待通り、ですかね。写真に映っている映写機はQUAD FILMS所有のもので、Anker製4K対応のレーザープロジェクター。自前の映写機があると、事前に画質を調整をしてから会場に持ち込めるので最高です。スクリーンはピン留めみたいにして吊り下げるのでフレームが直線にならないのは残念ですが、映写の時は暗くなるので気になりません。それより、壁の全面に近い面積を使えるので存在感のある上映ができます(サイズは120インチ)。音響に関しては、もう少し反響が抑えられないかな、とは思いました。でも、兎亭は住宅街の地下にあるので、外部から交通音の侵入などがなくて静かです。

イベント会場としての使い勝手は兎亭のウェブサイトを見てもらったほうが詳しいと思います。そこに俺なりの注釈を付けるなら、とにかく利用料が安いので、望めばゆったり時間がとれます。リハーサルや試写チェックでバタバタ焦らなくて良いのは超ありがたい。たとえ集客が悪くても、良い感じにアットホームな雰囲気になってくれるのも助かります。あと、もちろん、値段が理由で来るのを躊躇するような入場料設定にしなくて良いのは素晴らしい。

と、まぁ細々と上映会の舞台裏を書いてきたのは、今後もしここで上映してみたい人がいたらいっしょにやりませんか?ということです。ウチのコンテンツは映画ですが、共催ならジャンルにこだわりませんし、俺がここへ客として行った、俳優の杏奈さんの団体pocoは、演劇の上演と同時に写真作品の展示をやってました。使い方はいろいろありそうなので、工夫して楽しく遊べれば良いなぁと。なんかやりましょう!

2025年8月11日

「nest」について

先日の「東京亜熱帯2025」で上映した「nest」という映画は、2006年の作品です。俺が初めて本格的に(といっても、主演の役者さんと俺の2人を中心にゲスト出演者数名という編成で)撮った自主映画でした。俺自身もまったく見直してなかった。なので、作った記憶はあるのに他人の映画を見ているような感覚もあり、それで衒いもなく「この映画良いじゃん!」と口走ったり…(笑)

文学的イメージ(フランスの詩人ネルヴァルの本に載っていた民謡の一つを引用しました)を中核に、映像自体は自然主義的なアプローチで撮影したので、時々、なんかホン・サンスの映画みたいだな…て思いました(でも、製作当時はまだホン・サンスの映画は1本も見ていなかったです)。音楽は、二本木かおりさんに作ってもらったキュートなテーマ曲の音声素材をバラバラにしてシーンの各所に配置。全体を通して、オフビートなリズムがアクセントになってるし、ユーモラスな味わいもあって、サウンドトラックもなかなか良い。

ところで、この「nest」にコスプレイヤーの集まる広場での長回しカットがあるんですが、そこで目につくのがNARUTOのキャラだったりするのも、2025年のいま見るとおもしろいです。そういう「生きた記録」であって欲しいとは考えていました。撮影自体は2005年夏なので、もう20年前、つまり、この映像の中に20年前の東京の日常の空気が生きたまま保存されている。それはたぶん、当時の「商業映画」を見返すよりもずっと自然に感じられるはずだと思うんですね。

先に「自然主義」と言ったのはそういう意味です。見終わって「撮って良かったな」と思いました。こんな作品、絶対自主映画じゃなきゃできないというか、たとえ自主映画でも、カメラ周りにスタッフが2、3人いるだけで場の空気が一変してしまうはずなので。ミニマムな映画撮影、派手さはなくとも地味に良いと思うんですよねぇ。“親密な”というより、どこまでも“無垢な”空気の漂う「お散歩映画」でした。